20210320

 

もう2度と言葉を交わすことのない、彼の描いた私の絵が部屋に貼ってある。彼の簡素で何もない部屋のことをたまに思い出す、あれからわたしには恋人という存在はいなく、8ヶ月も経つ。

 

18歳の時、自分が穴として扱われることが嬉しかった。行為を通じて自分の価値を見出していた、どうせわたしがおばさんになったら誰も見向きもしないなら、穴でもなんでも、なんでも良かった。

 

20歳を越え、人として扱われることに欲求が向いた。作品を通じて考えや感情を伝えること、それに夢中になった。最近は鬱屈していて感情があまり動かないが、曲を聴いて泣いたり、詩集を読んでセンチメンタルになるくらいには復活してきた。

 

あなたのところまでいけたかな、いつもそう思う人がいる、それがどういう意味かわからないけれど、好きな詩集の一節で 兎に角 行きたいんだどこか

見たことも顔も知らない、声も聞いた事ないあの人の、ところまで。

 

酒が入って朦朧とした数日前、縦にアームカットを深く切り過ぎて、連れてかれた形成外科の医者が11針も縫ってくれた。包帯を巻かれる時はいつだって嬉しい。包帯は安心するのよね、と、看護婦のおばさんが言っていて、そうですね、とちょっと笑って答えた。

 

愛することは傷つくことではなく、喜ぶためのことだと、忘れていた、ね