とどかないところ

 

 

わたし世界で一番好きな詩集があってさ、君にだったら教えてあげてもいいよ、なんて、誰にも言えなかった。

自分の一番好きなものは、誰にも教えられない、いっつも。

 

男女の関係は脆い、いつのまにか拍子で崩れ落ちる、いともかんたんにこわせる、わたしはそれが怖くて、何にも踏み出せないまま、大人になってしまった、身体だけ。

自分がどんどん言葉がうまくなることが許せなかった、自分がどんどん嘘をつけることが許せなかった、君にだけ、君にだけわかってほしかった、それだけだった。

怖かったんだよずっと。

18歳の時、わたしは救われた、彼にとってはすごく軽率な行動だったのだと思う、人気のない公園でキスをして、その瞬間、呪いから救われた。

どこで何をしているの

もうその人の横顔にはもう触れないこと

わかってるし、

 

わかっているけど

思い出して悲しくなったり嬉しくなったりしてしまう

 

寂しいよ